「脱線者」が贈る 今生きるためのメッセージ 

〜俳優・織田裕二、自らを語る〜


数日間降り続いた雨から一転、久しぶりの晴れ間が広がった2月28日に、織田裕二さんによる「『脱線者』が贈る、今生きるためのメッセージ」講座を、大阪・中之島のリサイタルホールで行いました。

 織田さんは、バレエも行われるほどの広い舞台の、あえて客席寄りに講師席を設け、受講生の方々とコミュニケーションを取りながら講座を進行。意外なところで反応があったり、逆に賛同してもらえずに苦笑したりと、笑顔の絶えない楽しい講座となりました。

講座ではまず、昨年12月、自身の40歳の誕生日に、自らの半生を振り返った書籍『脱線者』(朝日新書)を出版した背景について、進行役の岩田一平・朝日新書編集長が質問。

 織田さんは、「子供たちの自殺問題が背景。『人間は死んでも生まれ変われるんだ』と思っている人が結構な割合でいる、と聞いた。子供が、ゲームのリセットボタンのように、ポンって生き返れると思っていたら、ちょっと怖い。他人の命も、自分の命も軽んじて、『やり直しがきくんでしょ』なんて思うとしたら。本の中にも書いたが、死って、そんなにきれいなものじゃない、ということは伝えたかった」と、もどかしげに自身の思いを吐露。
 
 詳細は本に譲りますが、「親はもっと子供たちに、自然の生き物と触れ合う機会を作ってあげてほしい。そこでは、父親って格好いい、と思わせるような演出だってあっていい。そして『死』をはっきりと伝えるべきだと思う」と、会場内外の「親」に思いを伝えました。

 さらに『脱線者』の書き出しが、「自殺しようと思ったことがある」という衝撃的なものであることから、マスコミでの話題がそこに集中し、その分、受け取られ方に誤解が生じているものもあったことから、当時の心情を整理。

 こちらも詳しくは本に譲りますが、「テニスができなくなったから、自殺を考えた」という短絡的な誤解に対して、「テニスができなくなったくらいで、自殺なんか考えない。要は人間関係だ。それまでテニス中心の生活をしていて、仲間はテニス部が中心。ところがケガをしてから、その仲間が腫れ物に触わるように、距離を置いていく。これが競争社会の落とし穴かと思った。部員数が多く、代表に選ばれることは厳しい。つまり、仲間である一方でライバルでもある。そして、ライバルでなくなったとき、存在自体が薄れ、仲間ではなくなる。テニスは孤独なスポーツだとわかっていて自ら選んだものだが、このときの孤独感は相当なものだった。
 中高生の段階では、学校外に知り合いという知り合いもまだおらず、家族とも反抗期の時期。腹を割って話せる人がいなくなり、誰にも相談できずに全部自分で抱えこんでしまった。突っ張っているもんだから、弱みを見せることもできず、そのうちにもう嫌になった。『人はひとりでは生きていけない』って言うけど、精神的に追い詰められたときって、本当に生きていけないんだなって実感した。そして『もう、やめちゃおうかな』って。スイッチをオフにしようかなって。すごく寂しかった」。

 その後、年齢も性別も学校も違う仲間たちとめぐり合い、世界が広がっていきます。
 「価値観が多様な人たちと接することで、世界が変わってくる。これは文字通り、世界を旅することと同じ。日本での価値観は外国ではおかしなものもある。世界が広がると、多くのものが見えてくる」と、今でも交流している親友たちの存在で脱却した、とつなげました。


 講座では、『脱線者』に掲載されていない写真を11点用意し、それぞれの時代における自身の思いやエピソードを紹介しながら、話を展開。
 子供の頃の写真では、当時の家や車だけでなく、お母さんまで写っており、岩田さんの「お母さん、美人ですね」との言葉に、「はい!料理もおいしいです!そう言っとかないと」と強調し、会場の笑いを誘う場面もありました。
 「湘南爆走族」のオーディションや歌手活動などは、本に詳しく掲載されている通りですので、ここでは割愛。
 「踊る大捜査線」の写真では、「デビュー当時、ドラマは女性が見るものとされていた。そのため、女性のためのドラマ作りが中心で、男はシンデレラに必要な王子様だけ。20代の男性主役はいなかった。そうと決まっているんだったら変えてやるって思った。フジテレビは『月9』と呼ばれる月曜午後9時枠が看板。そこで水9が『実験枠』として新たにできた。実験枠だから、何やってもいいって。そこでそのチームと、反骨心いっぱいでドラマを作った。実は水9は月9と違って弁当も安い。『弁当安いけど、負けられるか』って。実は『踊る大捜査線』も実験枠だった」など、作品作りの裏側も披露しました。

 最後にいかりや長介さんの写真紹介の場面では、一転してしんみりと。
 いかりやさんとのエピソードは本でも紹介していますが、岩田さんが「織田さんは、いかりやさんから何を学んだんでしょう」と質問したとき、「言葉にはできない。本当にうれしい時間だった」と声を震わせました。

講座の最後には、最前列の人に手が届きそうなほど、舞台前方に進み、「学生時代の本当にきつかったときの経験から、つらいか、つらくないかなんて、実は気持ちの持ち方ひとつで切り替えられるんだって学んだ。自分のスイッチを切り替えるだけで、こんなに世界って切り替えられるのかって。今もみなさんの隣の席には知らない人が座っているが、これから親友になるかもしれない。これも一つの出会いだ。これがきっかけで何かが変わるかもしれない。一つひとつの出会いと今を大事に」と強く、まっすぐなメッセージを贈りました。

→織田裕二さんの書籍『脱線者』(朝日新書)はこちらから!

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